「館長の石神問答」第1回

 館長の塩澤です。私は、道路脇などあちこちにある石造物を見てまわるのが好きです。

高森町にもたくさんの石造物があります。その中で、ちょっと変わったユニークな石造物を紹介したいと思います。

 第1回は馬頭観音です。高森町吉田地区の第八会所にあります。馬頭観音(観世音)はどこでもよく見られる石仏ですが、高森町でも平成6年の調査では全石造物2,531基のうち584基と断然トップ(約23%)です。しかし、この馬頭観音は前面のむかって左側に「馬脱異生」と文字が彫られているのが、ほかに見られない特徴です。馬を脱して異なる生に・・・とは?馬頭観音は、一般的には飼っていた馬が死んだとき建てることが多いといわれます。そうしてみると、死んだ馬にたいして「今度生まれ変わったら馬ではない生き物に生まれてこいよ。」ということではないでしょうか。

この馬頭観音の存在は、同じ吉田区に居住する手塚勝昭さんに教えていただきました。昭和の初期まで、多くの農家では馬を飼っており、田畑の耕起や刈敷・薪などの運搬に活躍していました。中には重い荷物を乗せて遠い道を毎日運ぶ中馬などの輸送に使われた馬もいました。そうした馬の姿を見て、持ち主は「今度生まれる時は・・・」と思ったのではないでしょうか。主人のやさしい心根が伝わってきます。

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